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 いつも拍手してくださる皆さま、ありがとうございます。
 久しぶりの「ぬら孫」です。

 今回は親子の会話になります。
 本当はずっと前に書いてたものなんですが、ちょうど季節ですし、アップしてみました。
 カップリングではありません。単純に鯉伴さんのセリフを書きたかっただけの、自己満足な代物です。

 OKな方はそのままお進みください。

















:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::










【蛍の揺らめき】










 夕飯には少し遅い時間帯。密集した住宅と川に挟まれた細い道に外灯などなく、そろそろ道が闇に隠れてしまう頃だ。
 鯉伴はふらりと家までの道を歩いていた。

「あ、お父さんだっ!!」

 幼い子供が、遠くから鯉伴を呼び、飛びついてくる。
 軽い衝撃を受け止め、鯉伴は我が子を抱き上げた。

「よぉ、リクオ。元気にしてたかい?」
「はいっ!!」

 いい子だ、と頭を撫でてやる。きゃっきゃとリクオが子供らしい、高い声を上げて笑った。
 我ながら親馬鹿だと思うが、他のどの子よりもリクオが一番可愛い。
 
「…一人か?」
「はい!お母さんが、そろそろ帰ってくるって」

 張り切って答えるリクオだが、鯉伴は渋い顔になる。

「こんな遅くに、一人で家を出たら危ねぇだろ?」
「ごめんなさい」

 しゅんとしたリクオを腕から降ろし、その栗色の頭をくしゃりと撫ぜる。

「だけど、迎えはありがてぇな。一緒に帰るか」
「はい!」

 差し出した手を小さな手が掴む。柔らかくて、壊れそうで、愛しくて。
 傷つけないように慎重に、鯉伴はリクオの手を引いた。

「お父さん、あれは何?」

 手を繋ぐのとは反対の指で、リクオは川を指す。
 周囲は暗く、はっきりとは見えない。川の流れる音が響いていた。
 その川の周辺に、小さな光が舞っている。

「ああ、蛍だな」
「蛍?」
「そう。夏の間、ああやって光る虫だ」

 珍しいな、と鯉伴は呟いた。
 都心部ほどの高い建物こそないが、昔と比べれば田畑は減り、川の水は濁っている。
 蛍など、ここしばらく見ていない。

「リクオ、知ってるか?蛍は人が魂で帰ってきた姿なんだと」
「ふーん…」

 蛍の淡い光は、鯉伴に女の背中を思い出させる。
 若菜の栗色の短い髪ではない。膝まで届く黒く長い髪の女。

「お父さん?」

 ふいに、握っていた手の力が増す。
 リクオが不思議そうに鯉伴を見上げていた。

「誰か探してるの?」
「あ?」
「なんか、そんな気がした」

 鯉伴は我が子の言葉に苦笑した。
 別に探していたわけではない。ただ、蛍を見るとかつての妻を思い出してしまうのだ。

「探してるってわけじゃねぇけどな。生まれ変わって、幸せになっていればいいと思うんだよ」
「それって、大切な人なの?」
「そうだな。リクオの、もう一人のお母さんだ」

 幼いリクオには、母親が二人という言葉が理解できなかった。

「僕のお母さんは一人だよ」
「そうだな。あー…、なんて言ったらいいんだろうな。まぁ、もう一人の家族だ」
「女の人?僕より年上?」
「ああ」

 リクオの目が輝いた。若菜と同じ色の目。

「それなら、僕のお姉ちゃんだ!!」

 保育園で家族というものを習った。
 年上の女の人には、お母さんとお姉さん、おばあさんがいるということ。
 おばあちゃんはもう死んじゃったけど、お母さんは今いて。おねぇちゃんだけがいない。
 だから、鯉伴のいう人物はリクオのお姉さんになる。
 幼い子供の理解ではそれが精一杯だった。

「まぁ、それでもあいつは喜ぶだろうよ」

 鯉伴は苦笑する。
 子供が好きだった妻だ。その子供ができなくて、己を責めて姿を消してしまったけれど。

「リクオ」
「はい!」

 明るい顔で笑うリクオを見れば、かつての妻は優しく笑うに違いない。

「もし、そのお姉さんに会うことがあったら、一緒に遊んでやってくれな」
「はい!」

 愛息子に微笑みつつ、鯉伴は心の中で話しかける。


 可愛い息子だろう?
 なぁ、山吹…。










「おねえちゃん、だぁれ?」

 三人の悲しい邂逅はこの後のことになる。





END


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こんにちは、しもつきです。

最近ぬら孫にハマり、リクオ受(特に昼若を愛でています)なSSを書き散らしています。
たまに、サイトでUPしたREBORNとかBLEACHの後日談的な話が出現しますv
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