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 「寝てる相手に告白する」っていうシチュエーションが、しもつきは好きらしい…。
 だいたいどのジャンルでもこの手の話が浮かんでしまって、青エクでは避けていたんですが、誘惑に負けて書いてしまいました。不完全燃焼だけど。
 せっかく書いたので、アップしてみます!




:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::




 兄に向ける感情じゃないことは知っていた。










【愛を囁く】










「お前たちの部屋を分けようと思うんだが」

 藤本神父のその言葉に、雪男は首を傾げた。
 目が合えば、すぐに視線を逸らされる。

「神父さん?」
「あー…なんだ?」

 話しかけないでくれと言いたげな空気。
 はっきりした性格の義父には珍しい態度だった。

「どうして部屋を分けるのか聞いてもいいですか?」

 逸らされた視線が、恐る恐る雪男を見て、すぐにまた他所を向く。
 燐が喧嘩の理由をごまかす時と同じように、気まずそうにしている。

 雪男は気付いた。
 藤本神父は燐から雪男を引き離したいのだと。

「兄と一緒ではいけませんか?」

 兄に向ける感情を、雪男は自身で正しいとは思っていない。
 兄弟に恋愛感情を抱くなんて、どうかしていると自分でも思う。
 それでも、何度否定しても、想いは消えてくれなかった。
 燐の側にいるために、触れたくなる衝動を、欲望を、いつも我慢している。
 最近はその我慢もだんだん限界に近づいているけれど。

「…そろそろお前らも兄弟離れをする頃だろ」

 間違いなく、藤本神父は雪男の感情に気付いている。
 雪男は穏やかな表情の裏で、冷えた頭を働かせた。

 どこに気付かれた?
 自覚はある。周囲には異常なほどに仲のいい兄弟だと映っていただろう。
 弊害がでるとは思っていなかったから、隠してはいなかった。
 兄を見る目も。触れようとする手も。嬉しさを抑えられない表情も。

「神父さん」
「な、なんだ?」

 にこりと雪男は笑った。
 弊害がでるなら、今後は気をつけよう。

「そうですね。僕も兄さん離れしたいですから」

 誰に気付かれても、構わない。
 ただ、兄だけには気付かれてはいけない。
 ほっと息を吐く藤本神父に、雪男はさらに口元を引き上げた。
 すぅと青い目が温度をなくしていくことに、藤本神父は気付かなかった。











「兄さん?」

 薄暗い部屋。照明は落ちていたが、部屋の壁の白さで、室内は薄く物の位置が見える。
 雪男は部屋の端のベッドに視線を向ける。ふくらんだ布団に近づいた。

「兄さん」

 ベッドに腰かけ、上から覗き込む。
 顔の半分まで布団をかぶった燐が、熟睡していた。
 そっと髪に触れる。燐はぴくりとも動かない。
 普段は鋭い目つきも今は隠れていて、その寝顔は幼い。
 可愛い、と思う。

「兄さん、起きないの?」

 困ったような声を出しながら、顔には微笑を浮かべていた。

「今日ね、テストが帰ってきたんだけど、満点だったんだよ」

 髪をやさしく梳きながら、雪男は言う。

「僕ね、約束どおりにお医者さんになるよ」

 兄さんは何になりたいのかな?
 やさしく甘く。まるで舌に広がる蜂蜜のように、耳に響く。
 それは、少年特有の高い声でいて、ひどく大人びた声だった。

「兄さんと約束したもんね」

 大きくなって、偉いお医者さんになって。
 燐を守ることができるほどに強くなったら。
 そしたら。

「全部が解決したら、迎えに行くよ」

 前髪を払い、むき出しになった額に口付ける。
 軽く触れた唇にはまったく気付かずに、燐は眠り続ける。
 それに安堵する気持ちと、残念な気持ちがあって。

「じゃあ、おやすみ、兄さん」

 燐に触れる手を名残惜しく思い、髪が最後の一本になるまでゆっくりと手を引く。
 部屋を出る際に閉める扉も極力音をたてずにゆっくりと。
 明日、雪男は修道院を出る。
 今までのように燐に触れることはできない。
 それはとても残念なことだけれど、雪男は決めたのだ。










 何からも守ってみせる。
 そのために、祓魔師になり、医者になると決めた。
 自分だけが兄を守れることが誇らしくて。
 頑張れと言ってくれた兄が嬉しくて。

「好きだよ、兄さん」

 それは惨劇の夜の前の出来事。
 まだ幸せな夢に浸っていた兄弟の、甘い夢。



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