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「ツナぁ、もうやめとけって」
「やだっ!ぜったい、やまもとと同じところまでのぼる!」
小さい手足を懸命に動かして、木にしがみつく小さな身体。
一番近い枝まで、まだ距離がある。
「ツナ、落ちると危ないから」
「だいじょうぶっ!!」
元気いっぱいに答えて、栗色の頭が下を見た。
「ひっ…」
とたん、子供の笑顔が引きつった。
下を見てしまったことで、恐怖が湧きあがってきたのだろう。
小さな身体が震える。
しまったと山本は思った。
「ツナ!ゆっくりでいい。降りてこられるか?」
できるだけ優しい声を出して、山本は言った。
しかし、子供の震えは止まらず、時々木にしがみついている手が離れそうになる。
「や、やまもとぉおお」
無理だと、子供が泣く。
「待ってろ、すぐに行くから」
それまで木にしがみついていろと、山本は叫んだ。
山本は、木に手をかける。
「あっ!」
頭上を見上げると、子供が手を離してしまっていた。
「う、うわぁあああ」
子供が悲鳴を上げて落ちてくる。
慌てて受け止めようとしたが、間に合わなかった。
大きな音を立てて、子供が落ちた。
子供は最初ぽかんとしていたが、次の瞬間盛大に泣き始めた。
「うわぁあああああん!」
小さな手で目をこする。
ぽたぽたと涙が子供のズボンに染みていく。
「ツナ!!」
山本は慌てて駆け付けた。
子供の怪我を確認する。
幸いにも、擦り傷や切り傷だけで大きな怪我はなかった。
山本はほっと息を吐いた。
「ツナ、大丈夫だ!痛くないよ」
頭を撫でると、いつも綱吉は泣きやんだ。
しかし、今回ばかりは落ちた時の恐怖の方が強いのか、さらに大きな声で泣く。
「ツナ、大丈夫だって。泣くなよ」
いくら修行を積んだ忍とはいえ、同じ年の子供の慰め方など知るはずがない。
山本は途方に暮れたような顔になった。
「泣くなって…」
「綱吉様!?」
綱吉の泣き声を聞いて、大人たちが駆けつけてくる。
山本は安堵の息を吐いた。
山本は、何度目かの怒声に、首をすくめた。
「そなた、何をしておった!!」
「綱吉さまの護衛がそなたの役割であろうっ!」
正直、山本はうんざりしていた。
綱吉は友達だ。
主人であることも、自分の役割についても理解している。
しかし、主人があそこまで何もできないと楽しくない。
同じ年の子供であればなおさらである。
山本は綱吉が時々好きではなかった。
うんざりする説教に山本が眉をひそめると、その態度を良く思わなかった男が山本の胸倉をつかんだ。
「このっ!子供だとて容赦せんぞ。聞いておるのか!」
男が拳を振り上げる。
殴られるっ、と覚悟した瞬間。
「やめて!やまもとはわるくないっ」
子供の声が響き、山本の頬を風が撫でた。
「綱吉様…」
目を開けると、必死に男の右腕にしがみつく綱吉の姿があった。
拳を収めることも振り下ろすこともできず、男は困っていた。
「やまもとに、なにしてるのっ!?」
目を吊り上げて怒鳴る綱吉に、男は言葉を飲み込んだ。
こうなった小さな主人は、言うことを聞かない。
良く言えば頑固、悪く言えば我儘。
しかし、今回はその我儘に山本は救われた。
「やまもとにあやまって!!やまもとにひどいことしたらゆるさないっ!」
男は戸惑いを見せつつ、山本から手を離した。
「やまもとっ!」
山本の腕に飛び込む小さな身体。
傷の手当も途中に飛び出してきたに違いない。
ところどころ血が滲んでいる。
「綱吉様ぁ!治療中に飛び出して行かれては困りますっ」
家臣の一人が、綱吉を追って入室した。
「綱吉様、先に手当を…」
先ほど山本に拳を振り上げた男が、言った。
しかし、その男を睨むと、綱吉はさらに山本の着物にしがみつく。
「やだっ!おまえら、やまもといじめるだろ!!」
山本は嬉しくなった。
忍というものは、主人のためだけに生き、死ぬのだと教わった。
そこには、感情なんてものは存在せず、ただ道具であればいいと言われた。
けれど、綱吉は違う。
忍というものを理解していないのかもしれない。
山本は友達だと、本気で言う。
「ツナ、ありがとな。俺なら大丈夫だ」
山本が笑うと、綱吉は目に涙を溜めた。
「やまもとは笑っちゃだめなの!わるいことしてないのに、そんな悲しそうな顔しない
で!!」
ダメツナと城内の中でも蔑まれる綱吉が。
嘲笑されても、文句ひとつ言わない綱吉が。
山本を責められた時には怒る。
いつも通りに笑えていたはずなのに、感情を見透かされてしまった。
「綱吉様…」
「手当なら、俺がしますよ」
綱吉を追ってきた家臣に治療道具を借りる。
「ツナ、それでいいか?」
「うん!」
笑顔で返事をした綱吉を見て、山本は決めた。
綱吉に一生を捧げようと。
一生をかけて、綱吉を護ると。
(俺、お前から絶対離れないから)
この決意は、生涯、山本の中にあった。
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タイトル今決めた。
【きみとの約束】
うん、これにしよう。
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最近ぬら孫にハマり、リクオ受(特に昼若を愛でています)なSSを書き散らしています。
たまに、サイトでUPしたREBORNとかBLEACHの後日談的な話が出現しますv