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暑さは変わりませんが、9月です。
朝夕が少し過ごしやすくなった気はしますが、しもつきは相変わらず冷房に依存しています。
外に出たくない。と、休みの度に予定の半分もこなせません
ですが、妄想だけははりきりつつv
今日は、首リクSSをアップ。
今回は真っ白な首無さんです。(たぶん、真っ白です)
そして、不完全燃焼なので、ご注意ください。
リクオが、首無にいろいろ質問しています。
拍手をぽちっとしてくださった皆様、いつもありがとうございます!
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いつのことかはわからない。
でも、少し前から変わり始めていた。
例えば、綺麗なその顔がものすごく大人に見えたりとか。
紐を扱う手に撫でられるのが心地よかったり。
一言一言にどきっしたり。
笑いかけてくれると、たまらなく嬉しくなって。
きっとこれが恋なんだという自覚はあった。
【ねぇ、教えてくれる?】
散歩がてら外に出たリクオは、首無と並んで歩いていた。
「今日は暑いね」
「そうですね…9月も過ぎたというのになかなか…」
首無の言葉が止まる。
不思議に思って顔を向ければ、首無はリクオの隣をじっと見ている。
同じ方向に目を向けると、道の端にダンボールが捨ててあった。
箱の中のぬいぐるみのような子猫は、ちょこんと座ってリクオを見ていた。
子猫の大きな目と合う。
にゃあ、と小さな声で鳴いた。
「捨て猫…でしょうか?」
「さぁ…」
近づいていき、首無が猫の頭に手を伸ばす。
人間などよりずっと勘の鋭い動物である猫は、シャアアと鳴いて首無の手に爪を立てる。
「首無!」
「大丈夫です」
リクオに言ってから、首無は猫を安心させるようににっこり笑った。
もう一度猫に手を伸ばす。
今度は首無に敵意を向けることなく、猫は首無の手を受け入れた。
「あ…」
思わず声が漏れる。
首無に抱き上げられた猫は、最初じっとしていたが、首無の手が身体を撫でると心地よさそうに頭を擦り付ける。
「すごいね、首無」
「いえいえ」
にこにこと笑う首無の笑顔に、リクオの胸はじんわりと熱くなる。
首無の笑った顔が大好きで。
よく笑う首無ではあるが、自分がもっと笑顔にさせたいと思う。
「ねぇ、首無…」
「はい?」
「首無の願い事って、なに?」
首無は迷うように視線を彷徨わせて、再びリクオを見た。
「…今はまだ、言えません」
「今は?」
申し訳ありません、と首無は目を逸らす。
「妖怪か人間かをまだ選んでいない若に、私の願いを言うわけにいかないのです」
「…それって、ボクに関係することなの?」
「はい」
首無と過ごす一瞬一瞬が大事で。
みんなの場所を、笑顔を。
護っていくと決めた。
それは、妖怪を選ぶということになるのだろうか。
「若はゆっくり決めればいいんです」
困惑が顔に出ていたのか、首無がリクオの顔を覗き込んだ。
「少し、河原に寄って行きませんか?」
首無の指差す方向には、土手がある。
リクオは頷いた。
少し歩くと、土手で遊ぶ子供たちの姿が見えた。
二人は夏草の上に腰を下ろす。直射日光は暑かったが、青草の匂いが心を落ち着かせる。
首無の腕の中の猫が、眠そうに欠伸をした。
「可愛いですね」
「うん」
微笑ましく猫を見守っていると、優しい眼差しでリクオを見つめる首無と目が合った。
「首無…?」
なんだか、その視線が異様に恥ずかしくて、こそばゆくて、リクオは視線を逸らす。
顔が熱い。
「若の願い事はなんですか?」
きょとんと目を瞬かせる。
「願い事?」
「ええ。私の願い事を聞かれたでしょう?」
「ああ…」
深い意味があったわけではない。
ふと、みんなに優しい首無にも願い事があるのか知りたくなったのだ。
自分にできることなら、叶えてあげたいと思った。
そうすれば、首無はきっとリクオに嬉しそうな顔をしてくれるだろう。
「ボクは…みんなが笑っていられるならそれでいいよ」
首無は微笑を浮かべた。
「若はお優しいですね」
「優しいのは首無でしょ」
その猫を拾った時のように。リクオは、じっと猫を見る。
首無は苦笑した。
「別に優しいわけではありませんよ」
そもそも人に害なす存在である妖怪に「優しい」は、褒め言葉ではない。
無意識にそういう言葉がでるというのは、やはりリクオの感覚は人間に近いのだろう。
そんな自分に、首無たちはよくついて来てくれるとリクオは思う。
「じゃあ、首無の信じてるものってなに?」
やっぱり、父親の愛した奴良組なのだろうか。
だから、その息子である自分にもよくしてくれるのだろうか。
首無はふわりと笑った。
「人間を選ぼうと妖怪を選ぼうと、私が信じるのは若ですよ」
迷いのない言葉。
猫が、にゃあと鳴いて首無の腕の中から逃げた。
「たとえ、誰が敵に回っても、私だけは最後まで若の味方です」
リクオは言葉に詰まった。
優しい言葉で、優しい声色で、ふわふわとした甘い言葉なのに。
そこには決して曲げられない強さを感じる。
リクオが大切だと、特別だと言われているような気がして。
するりと次の質問が飛び出した。
「首無の大切なものって、なんなの?」
祖父や父がそうであったように。
大切なものを持つ者は強い。
むずむず、どきどきとした複雑な胸の感覚を覚えながら、リクオは首無の言葉を待った。
首のない頭が斜めに傾く。
それからすぐに、首無はリクオの前で膝を折った。
「私の大切なものは、今も昔も変わりありません」
「首無?」
リクオの顔を見上げて、首無はにこりと笑う。
「あなたの側だけが、私の生きる場所です」
大切そうに、リクオの手を取る首無に。
なんだが、その姿がお姫様を護る騎士に重なって。
リクオは恥ずかしくなった。
それでも、決して嫌ではなくて。
「うん…、ボクもきみたちが大好きだよ」
それはそれは嬉しそうに笑う首無にまた恋をした。