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 三国恋戦記の影響で、すっかり三国志に目覚めたしもつきですが、三国志を扱った本や漫画が多すぎてどこから手をつけていいかわかりません・・・。
 初心者には、本探しからすでに難関です
 とりあえず、漫画から手をつけてみましたが、長編過ぎてどれも終わらねぇ…。
 ちょっと齧った程度の知識でわかったのは、孟徳さんと仲謀さんが思った以上にできる人たちでした。舐めててすみません。

 というわけで(?)、初の三国恋戦記SSをあっぷします。
 繰り返し言いますが、しもつきは三国志の初心者も初心者です!
 時代背景とか、中国の歴史とか、全くの無知ですのでご注意を。
 ゲームと同じようにパロとして読んでいただけると嬉しいですv
 
 といっても、歴史なんてほとんど関係ありません。
 料理ネタです。そして、花ちゃんのお相手は翼徳さんです♪


 

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 

 


 この世界にくるまでは料理なんてまともにしたことがなかった。
 食べさせたい人といっても、家族や友人くらいで。
 練習するようになったのは、彼が、本当においしそうに食べてくれるからだ。

「んまっ!!」

 木さじを銜えて目を丸くした翼徳が嬉しくて、花はにっこりと笑った。

「やっぱり翼徳さんの食べ方は見てて気持ちがいいです!」

 褒めてくれるのが嬉しくて、最近はすっかり彼専用のパティシエになりつつある。

 

 

 

 


【あなただけに特別…】

 

 

 

 

 


 花が少し動けば、翼徳も動く。
 花が鍋を覗けば、翼徳も背後から覗き込む。
 台所で花の後を追いかける翼徳に、芙蓉が呆れた顔をした。

「ちょっと、翼徳様!そんなに後を追い掛け回したら、花が落ち着いて作れないじゃないですか!」
「だって、本当に上手いんだよ。花の菓子。できるまで待ちきれなくて」

 翼徳は、くんっと鼻を嗅いだ。

「甘い匂いがする…うまそう」
「翼徳様!」

 もうっと、芙蓉が目を怒らせて、台所に下りてくる。
 翼徳の肩をぐいぐい押すと、台所からぺいっと押し出した。

「できるまで、兵の訓練をしてきてください!!」
「えええぇっ!!」

 不満そうな翼徳に、芙蓉はさらに眦を吊り上げた。

「そんなこと言うなら、できてもあげませんよ!」
「行って来ます!!!」

 芙蓉の剣幕に、翼徳は慌てて練習場に向かった。

「まったく…」

 仁王立ちする芙蓉の後姿に、花は苦笑する。
 台所を追い出された翼徳には申し訳ないが、少しほっとした。

「ありがとう、芙蓉姫」
「いいのよ、これくらい。あんなに後をついて回られてちゃ、料理どころじゃないもの」

 芙蓉が花の手元を覗き込んだ。

「それ、何を作ってるの?」
「プリンって言うんだよ」
「甘い匂いがするのね」
「そうだよ。これを型に入れて、後は冷やして固めるの」

 芙蓉は驚いた顔をした。

「冷たい食べ物なの?」
「うん。みんなの分も作るから、芙蓉姫も食べてね」
「ありがとう」
 
 大きな型を数十個と小さな型を一つ用意した花は、芙蓉に手伝ってもらって鍋の中の液体を型に流し込んだ。

「あとは冷やすだけだから、一人で大丈夫だよ。ありがとう、芙蓉姫」
「そう…。また後で、楽しみにしてるわね」
「うん」

 作るのは終わった。
 後はプリンが固まるのを待つだけだ。
 花は、城の中を散歩することにした。
 
「花!」

 上着の端で汗を拭きながら、翼徳が花を呼んで走ってきた。

「翼徳さん、訓練は終わったんですか?」
「うん。芙蓉が怖いから、みっちりやってきた」

 翼徳は、とても素直だ。
 期待に輝く目が、おやつはできたかとしきりに尋ねてくる。

「翼徳さん、おやつを食べませんか?」

 大きく頭を揺らして頷いた翼徳は小さな子供のようで、花は小さく噴き出した。

 

 

 

 


 その夜は、宴会だった。
 せっかくだから、日ごろ世話になっている面々に大量に作ったプリンを差し入れた。
 プリンという食べ物がもちろん初めてな人々である。
 訝しげに器の中を覗いていたり、匂いを嗅いでみたりしていたが、木さじで掬った一口に、顔が綻んだ。

「おいしいです、軍師殿」
「これはなんていう食べ物ですか?」
「ぜひ作り方を教えてください。妻に作らせたい」

 中には、甘いものが苦手という武人もいたが、ほとんどの器は綺麗に空になっていた。
 玄徳や雲長、芙蓉、孔明もおいしそうに食べてくれた。

「本当においしいわ。これなら、雲長にも引けを取らないわね」

 作る過程を見ていても、完成品を初めて食べた芙蓉は感心していた。
 冷たいもの菓子というのを初めて食べたらしい。

「さすがに花の世界には珍しいものがあるのだな」

 玄徳は、味を褒めた後で、プリンをまじまじと見つめていた。

「よかった。みなさんのお口に合うか心配だったので」
「すごくおいしいよ」

 孔明は、プリンを見つめた後で、材料費がなぁとか、味は満点だけどとか呟いている。
 もしかしたら、売ることを考えているのかもしれない。
 が、手間暇を考えれば特産品にはならないだろう。

(本当に、氷を持ってきてもらうのに苦労した…)

 休憩中の兵の数人にお願いして、氷を洞窟から運んでもらったのだ。
 往復で半日かかる仕事に、花は冷蔵庫という文明のありがたさを再認識した。

「あれ?」

 遅れて宴会に参加した翼徳が、雲長の隣に座った。
 他のみんなと同じプリンを渡すと、不思議そうに呟いた。

「どうした、翼徳?」

 雲長の言葉には答えず、翼徳はプリンと花を交互に見た。

「俺が食べたときには、みかんが乗ってたよね?」
「よ、翼徳さん!!」

 花が慌てて声を上げる。
 しかし、周りにいた玄徳や雲長、孔明はしっかり拾っていたらしい。
 事情を知っている芙蓉は別として、勘のいい玄徳と孔明はにやりと笑った。

「春が来たか…」
「翼徳殿に落ちるとはね」

 真っ赤になった花は、翼徳の隣に小さくなって座った。
 無神経!と、芙蓉に怒鳴られながら、翼徳は花を見た。

「花」

 ちゅっと頬で軽い音がした。
 そこに触れたのが唇だと気付いたのは、翼徳のそれが離れていった後だった。

「すっごくおいしい」

 満面の笑顔に、花もつられて笑った。

 

 


 好きな人には特別なものを。
 いつの時代。いつの国でも、女の子の本気は一緒。


 

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