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夜昼幼馴染設定で「契り」をアップですv
そして、前後編です。後編は、また後日。
この設定、個人的に気に入ってるんですが、どんどんリクオのキャラが離れていってる気がします
苦手な方は、ご注意ください…。
昨日は地元で花火大会でした。
今年見に行くのは諦めていたのですが、同僚と女二人で行ってきました!
しかし、携帯で花火を取るのは難しい…。
最後に、拍手ぽちっとしてくださった方、ありがとうございます!!
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自分にとっての一番は、アイツだけだ。
だから、アイツにもそれを望むのは当然だろう?
【契り】
パタパタと慌しい足音が聞こえて、夜は読んでいた雑誌から顔を上げた。
昼が、帰ってきた。
なんとなしに目で追っていた雑誌など、すでに興味はない。
夜は近づいてくる足音に耳をすませた。
しばらくして、襖が乱暴に開く。
「ただいま、夜」
「おかえり」
昼は鞄を置くと、制服を脱ぎながら箪笥を引く。
普段家で過ごす着物ではなく、洋服を取り出した。
「おい、オメー…」
帰ってからの慌しい様子といい、洋服といい、昼はどこかに出かけるつもりなのか。
「ごめん、夜!ボク、これから学校行かなきゃ…」
「学校?」
昼は早口で説明した。
これからクラスメイトと学校で肝試しをするのだという。
「ああ?オレとの約束は?」
たいした約束をしていたわけではない。
昼は、週に数回、夜から刀の使い方を習っていた。
「ほんっっと、ごめん!」
両手を合わせる昼に溜息を吐く。
未練がましい真似はしたくないから、早々に部屋を追い払った。
「そんなに人間がいいかよ」
たいした約束ではない。
だけど、自分との約束より人間との約束をした昼に苛立った。
夜の学校は不気味だ。
妖怪を身近に知っているリクオですら、得体の知れない恐怖心がある。
全くの人間であれば、それはどれほどのものだろう。
リクオは、自分の袖を掴み震える幼馴染を横目で見た。
「カナちゃん、怖いの?」
リクオのすぐ側で、カナはリクオを見上げた。
揺れる目が、水気を帯びている。
「う、うん…」
だったら来なければいいのに。と、リクオは思うが、カナにはカナの都合があるのだろう。
リクオはせめて、この幼馴染を安心させてあげたいと思った。
「大丈夫だよ。幽霊とか、妖怪なんてそうそういないよ」
「そうそう?」
「あ、いや。いないよ、たぶん」
あはは、と笑って誤魔化してみる。
それが良かったのか、能天気に笑うリクオにカナも少しだけ笑った。
「そうだよね」
後ろでこそこそ話していたら、前を歩く清継がくるっと向いた。
「そこ!この神聖な場所で何を能天気に笑っているんだ!!」
「神聖?」
清継の言葉に、隣を歩く島が反応した。
「夜の理科室は、妖怪が出るという噂だ。神聖な場所だろう」
一度神聖という言葉を辞書で引くことをお勧めしたい。
その場の全員が思った。
「ねぇ、清継くん。理科室に出る妖怪って、どんな妖怪なの?」
カナの問いに、清継はメモ帳を取り出した。
目撃情報をそこに書き留めているらしい。
「大きな鎌を持っているとか、竜巻が発生したとか、とにかく大きかったとか…一貫性がなくてね」
ようするに、清継もわからないということだ。
「…理科室…」
リクオが呟き、他の三人も足を止めた。
理科室と書かれたプレートを見上げ、誰かが唾を飲み込んだ。
「…よし、誰が一番に行くか」
「清継くんが行くんじゃないの?」
カナの言葉に、清継は言葉を詰まらせた。
妖怪は見たい。が、怖いものは怖い。
「ぼ、ボクが開けてもいいけど…いいのかい?」
ドアに手をかけるが、なかなか開けようとしない。
できれば他の人に開けて欲しいという顔だ。
では誰がドアを開けるか。
互いを目で探っていると、リクオが前に進み出た。
「ボクが開けるよ」
誰かがやらなければ先に進まない。
というか、帰れない。
家でふてくされているだろう夜を想像して、リクオは手に力をこめる。
ガラ…。
リクオはいつもするように理科室のドアを静かに引いた。
教室を軽く見回してから、足を踏み入れる。
コポコポと水槽のエアポンプの音が不気味に響く。
鶴の剥製が、輪郭でわかって。今にも動きそうで恐怖を煽る。
しかし、それはいつもの理科室の姿だった。
昼と夜の不気味な違いはあれど、特に変わった様子はない。
背後にひっつくカナに、リクオは笑顔を向けた。
「大丈夫だよ、カナちゃん。何もないみたいだ」
暗くてカナの表情ははっきりとしないが、服を掴む力が緩んだ。
「そっか…」
「うん。単なる噂だったらしいね」
二人が顔を見合わせてほっとしたところだった。
リクオとカナの間を鋭い何かが横切った。
とっさにリクオがカナを突き飛ばしたおかげで、カナに怪我はない。
「リクオくん!?」
大丈夫だと言おうとして、リクオは痛みに顔を顰めた。
腕を触るとぬるりとした感触。血だ。
目を凝らすと、腕を刃物のようなもので切り裂かれていた。
「なに、これ…」
かまいたちというものだろうか。
どうして、こんな現象が?
首を捻るリクオに、叫び声が届いた。
「清継くん、島くん!?」
二人は、抱き合って震えていた。
その前に、なにやら大きな黒い影。
妖怪だった。
「なんで…」
組の妖怪には外出を控えるように伝えてある。
そもそも奴良組の妖怪なら、リクオを襲うなんてことはしないだろう。
「や、やっぱり妖怪はいたんだ!!」
「そんなこと言ってる場合っすか!!」
妖怪の存在に目を輝かせる清継と、恐怖に顔を引きつらせる島。
リクオは二人の側に駆けつけた。
ぎょろりとした瞼のない眼に睨まれる。
目の前にすると、それはリクオの身体の三倍はあろうかというほどの大きな妖怪だった。
その身体と同じ大きさの鎌。
カマキリのような外見をしている。
「っ、引け」
リクオは、恐怖を押さえ込んで妖怪を睨んだ。
この場で、妖怪に対抗できるのはリクオしかいない。
もっとも、対抗できる力など昼のリクオは持ち合わせていないが。
妖怪はくんと鼻を鳴らした。
「お前、マズソウナ臭いがスルナ」
それはそうだろうとリクオは思う。
なんの力もない人間とはいえ、リクオは妖怪総大将の血を継いでいる。
下級妖怪では、その血すら恐れるような。
おそらく目の前の妖怪は、その血に本能的な恐怖を覚えているのだろう。
だからといって、喰われないわけではない。
むしろ、ここで仕留めておきたいと思わせたようだ。
「マズハお前から喰ろうてヤル」
リクオは身構えた。
勝てる保障はどこにもない。
だが、やらなければ全員死んでしまう。
肝試しなんて、何をしてでもみんなを止めればよかったと後悔した。
妖怪が動く。
消えたと思った瞬間には、リクオの身体は吹き飛ばされて、背中を壁に叩きつけられた。
カナの悲鳴が聞こえた。
「くっ、」
身体を起こそうとすれば、体中が痛んだ。
どこか内臓をやられたのかもしれない。
呼吸がしにくい上に、口からはヒューヒューと変な呼吸音がした。
「ごほっ」
咳をすると、痰と一緒に血を吐き出した。
その間にも、妖怪が近づいてくる。
立たなければと思うのに、立てそうになかった。
ゆらりと鎌が目の前で持ち上がる。
殺される。
そう思った瞬間。
浮かんだ自分の名前。
「勝手に手ぇ出してんじゃねーぞ」
目の前で、ごとりと鎌が落ちた。
「うがぁぁああああああ」
妖怪が苦痛の叫び声を上げる。
妖怪の鎌を落とした男は、軽い音を立てて着地した。
暴れる妖怪には目もくれず、刀を肩に乗せて不適に笑った。
「大丈夫か、昼?」
「夜…」
見慣れた姿に、昼のリクオは安堵した。
しかし状況はのんびりしていられない。
妖怪は、今度はカナたちに標的を変えた。
「待てっ!!」
痛みのため、我を忘れているのだろう。
昼の声は届かなかった。
「夜!!」
「なんだ?」
昼が叫べば、夜は場にそぐわないほど暢気に返事をした。
「た、助けてあげて!!」
昼の求めに、しかし夜は不機嫌そうな顔をした。
「あいつらを助ける義理はねぇよ」
「夜!」
昼が苛立ち交じりで夜を見上げる。
夜は、じっと昼を見下ろしていた。
「オレが必要か、昼?」
「何言って…」
昼はカナたちが気になって仕方ない。
「こっち見ろよ、昼!」
大きな声に、昼は再び夜を見上げた。
「オレが必要だって言えよ、昼」
視界の端で、妖怪の牙がカナを襲おうとしている。
夜は動かない。カナは幼い頃、一緒に遊んだこともある相手だというのに。
本気で、人間のためには動かないらしい。
「言えよ」
昼はとっさに口を開いた。
「必要だよ!助けて、夜」
夜のリクオは満足そうに笑い、刀を構えた。