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最近、ぬら孫にハマってます。
大人って素敵
本屋に走って、即効で買い集めましたv
総大将(若い頃の)と夜若の着物の色気が堪らなくて、よだれが出そうです。
昼若も可愛い♪
漫画だけじゃ飽き足らず、二次に走ったわけですが…主人公大好きなしもつきとしては、若受けに走ってしまうわけで。
ついでに、自給自足してみました
初なので、キャラが違うし(いつものこと)、生ぬるい感じになってます。
CP要素はあまりなくて、鴆+リクオの友情以上恋人未満って感じです。あ、でも矢印はお互い向いてる…つもりです。
薬師一派の鴆に子供が生まれた。
リクオは総大将である祖父の代理で、子供とその母親の鴆を見舞うことになった。
『鴆てぇのは、身体も弱いが数も少ねぇからな。お前、ちょっと見舞って来い』
酒を持たされ家を追い出されたリクオは、渋々鴆の屋敷を訪れた。
ちなみに、子供の出産祝いに酒を持っていっても他の妖怪の腹に消えるだけだとわかっているので、母鴆のために途中で果物を買った。
【彼を呼ぶ名前だけ…】
「こんにちは―」
玄関先で声をかければ、バタバタと慌てたような足音が聞こえてきた。
「リクオ!」
「鴆くん、こんにちは」
にっこり笑うリクオに、鴆も嬉しそうに笑った。
「おう!ガキを見に来たのか?まぁ上がれよ」
「お邪魔します」
鴆のテンションがいつも以上に高い。
嬉しそうだね、と声をかければ、「おうよ」と短い返事が返ってくる。
「分家筋の鴆のガキなんだが…父親とは従兄弟同士になるしな。叔父さんになった気分だぜ」
リクオの頭をくしゃくしゃ撫で回し、鴆は満面の笑顔を浮かべる。
叔父さんというより、まるで父親そのものだなとリクオは思った。
「お前さんが生まれたときとおんなじくれぇ嬉しいね」
しみじみと言われて、リクオの頬がうっすらと染まる。
(そっか、ボクのときも鴆くんはこんなに喜んでくれたんだ)
なんだか照れるな。
こっそりリクオが思っていると、鴆の足が部屋の横でぴたりと止まった。
「ここだ」
障子を開けると、儚い少女のような女が布団に横になっていた。
その隣には丸くなっている美しい鳥。
女は現れたリクオを不思議そうに見つめた。
「あの…」
女の問いには鴆が答えた。
「奴良組の若頭だ」
女の目が丸くなった。
慌てて布団から身体を起こす女を、リクオは手を振って制した。
「いいよ!そのまま横になっててよ」
しかし女は首を振って、大丈夫だと言う。
リクオは、「そう…」と呟き、上げた手を下ろした。
「入っても大丈夫?」
「はい。もちろんです」
部屋に入り、女の隣に眠る鳥を見た。
リクオの視線に気付いた女が、隣のわが子をそっと抱き上げる。
真っ白な鳥だった。
頭の毛の一部が薄い桃色で、その色合いが儚く可憐に見せる。
「若様、これが先日生まれたばかりのわが子ですわ」
微笑む顔は、母親そのもので。
「わぁ…」
思わず、感嘆の声が飛び出す。
鴆という妖怪は、生まれたときはそれはそれは綺麗な鳥だと聞いていた。
人間の世界にもいくつか綺麗な鳥というのがいるから、それらの鳥を想像していたのだが。
今目の前にいるのは、今まで見たことがないほど美しい鳥だった。
「リクオは鴆のガキを見るのは初めてか」
鴆がリクオの隣に座った。
「うん!本当に綺麗だね」
目を輝かせるリクオの頭を鴆はぽんと叩いた。
優しい目で覗き込まれて、リクオはなんだかくすぐったくなった。
視線を逸らしたときに、持参した酒が目に入る。
「あ。これ。ウチの組からお祝いだよ」
酒と果物を布団の横に置く。
「ありがとうございます」
「なんでぃ。果物もあるのか」
まるで不釣合いな祝いの品に、鴆は首を傾げた。
どうせなら、酒のつまみになるものが欲しかった。
心の声が顔に出ている。
「果物はお母さんの分。酒は、どうせ鴆くんたちの腹に消えちゃうんでしょ」
バツが悪そうな顔をする鴆に、女はくすりと笑った。
そして、布団の横の包みに手を伸ばす。
折り畳んである布を開けば、子供と同じ色の羽。
「若様に、ぜひ」
差し出された羽に、リクオはきょとんとした。
受け取って欲しいと言われて、いいの?と首を傾げる。
「ぜひ…」
リクオはゆっくり手を伸ばして、その羽を受け取った。
触れるのも躊躇われるほど、きれいな羽だ。
「ありがとう」
綻んだ笑顔に、鴆の女もふわりと笑む。
「お礼に、何かあげたいんだけど…」
「い、いえ!もう頂きましたので」
滅相もないと手を振る女に、リクオは頬を膨らませた。
「それは、奴良組からのお祝い。ボク個人で何か…」
そうだ、とリクオは思いつく。
「嫌じゃなかったら、僕の名前をあげるよ」
己の顔を指差すリクオに、隣の鴆がぎょっとした。
「お、おい、リクオ!」
名前をあげる、とは大ごとだ。
リクオは、他の妖怪とは違うというのに。
「そ、そんな、恐れ多い」
当然、母鴆は遠慮した。
「あ、やっぱり嫌だった?」
そうだよねぇ。母親なんだから、自分の子供の名前は自分で決めたいよねぇ。
顎に手を当てて呟くリクオに、若い母親は慌てて否定した。
「い、いえっ!嫌だなんてことは!!ただ、恐れ多くて…」
リクオはきょとんと母親を見つめて、「なんだ」と安心した笑顔を浮かべた。
「そんな大層なものじゃないから…うーん。でもそんなに遠慮しちゃうなら、一部だけとか…あ。リク、とかどうかな?」
名前を与えることに加えて名付け親にまでなってしまったリクオに、鴆は頭を抱えた。
母鴆の体調を気遣い、早めに退室したリクオは鴆と歩いていた。
送らなくていいと言うリクオを、「そうはいくか」と鴆が制したためだ。
夕方の冷える風が鴆の体調にさわらなければいいと思うのだが、鴆はなんでもないような顔をしていた。
まぁ、人間とは違うのだから、身体が弱いといってもそんなに気遣う必要はないのかもしれない。
リクオは鴆の膨れた横顔を見た。
「鴆くん、なにか怒ってるの?」
不思議そうな顔をするリクオに、鴆は腕を組んでそっぽを向いた。
「そりゃ膨れもするさ!俺だって、総大将や二代目、お前の名前が欲しかったんだからな」
それを、あの子供はたやすく手に入れた。
リクオはきょとんと目を瞬かせて、そんなに大層なことかなぁと呟く。
鴆はくわっと目を開いた。
「いいか、リクオ!もうあんなこと、軽々しく二度とすんじゃねーぞ」
自分の価値がわかってんのか!
鴆に怒鳴られても、リクオには己の価値なんてたいしたものには思えなかった。
しかし、ここで思ったままを口にすれば鴆をさらに怒らせてしまうだろうということは分かっているので、リクオは黙った。
「まぁ、いいじゃない。あの子も気に入ってくれたみたいだし」
リクオが名前を呼ぶと、子供はわずかに微笑んだのだ。
鳥の姿をしているので、曖昧ではあるが、リクオはあの子供が笑ったのだと思っている。
鴆はリクオの様子に大きく溜息を吐いた。
「わかってねぇなぁ」
リクオ。と、鴆が呼ぶ。
顔を上げたリクオの目の前に、バサッと布が降ってくる。
「ちょっ、」
薬草の、かぎ覚えのあるにおい。
降ってきたのは鴆の羽織だった。
「鴆くん?」
頭からぎゅっと押さえ込まれる。
腕が後頭部に回っていた。
どうやら抱き込まれているらしい。
「…俺が、お前の名前を、お前以外の奴に呼ぶのが嫌なんだよ」
もうあの子の名前を呼べねぇじゃねぇか。
掠れた声で呟く鴆に、リクオの顔は赤く染まる。
(ボクの名前が特別だって言ってくれてるのかな)
着物に隠されてて良かったかもしれない。
だって、勘違いだったら恥ずかしい。
リクオは鴆の着物の端をぎゅっと握った。
そして、着物で隠しててよかったと思っているのはリクオだけではなく。
大人のほうも、頬が夕日以上に赤く染まっていた。